事件
街角ウォッチング。
まだ警察沙汰にはなっていないが、これは明らかに事件である。
ちょっと見え辛いが、通りがかりの三本松通りの一画の道路脇に、黒のスニーカーが片方だけ、不自然な角度で横たわっている。
能天気な素人衆は、間違いなく見過ごしてしまうであろう。
悠長にコスモスを楽しんでいる場合ではない。
ここは、シャーロックやレイトン教授を自認する筆者の推理力と経験値というものが、ものを言うのである。
例えば以下に列挙するような、壮絶な体験の事だ。
昼起きてみると(夕方或いは時間を特定できない時も多い)、光がやけに眩しい。
意識が朦朧としており、吐き気もある。
喉の渇きは尋常ではない。
此処は何処、私は誰という半覚醒状態だ。
隣に見知らぬ人がいびきをかいている場合もある。
財布や鞄や衣類やスマホがない。靴やソックスは、何故か片方だけ見当たらないケース、衣類は食べ物の汁又は泥で汚れて、破れているケースが多い。
半裸という場合もある。
頭部や手足に流血の痕跡が認められる。
たんこぶや腰痛が伴う場合もある。
ポケットには見知らぬ名刺が入っていたり、下手な字で法外な金額が書かれた紙片があったりする。
最悪の場合、パートナーの置き手紙があったり、荷物がすっからかんだったりすると、更なる重大な展開も視野に入ってくる。
以上の例示はあくまでも脚色された経験論或いは仮定論である事をお断りしておく。
自分のスニーカーでなくてよかったが、しかしこれは、紛う事なき未解決事件である。
夢追い人
過日宗像大島に、仲間とトレッキングに出かけた。
宗像大社中津宮を抜けて御嶽山(標高224m)の展望台から北側に降りると、岩瀬という小さな集落があって、女人禁制の沖ノ島へ行けない女性達のために建立された、沖津宮遙拝所がある。
そこに立って感じた既視感、そうここはずーっと以前、来たことがあるんだった。
飲食店経営時代はまさにバブルの時期とも重なっていて、投資話もたくさん転がっていた。
必ず上がる株を買わない奴は馬鹿だ、と言われた。(実際買って大コケしてホントの馬鹿だった)昼夜もない位の超多忙だったが、いつか自然の中でゆったりと暮らしたいという夢は、ずっと持ち続けていた。
その時この島のこの地に、別荘地分譲の話を見つけて購入したのだ。
只如何せん現実は甘くなく、土地の手入れ等には頑張って出かけたものの、金と暇が追い付かず、ついぞログハウス建設には至らなかった。
今眼前に、夢の欠片が見える。
木は生い茂り、何軒かのログハウスが見え隠れするが、アクティブ感はない。
かって北の果てで牧草の上に寝転び、日田の山奥で杉の森に抱かれていたこともある。
夢は叶えば、夢でなくなる。
夢追い人は旅路の果てで、未だ夢追い人のままだ。
エタノール
ファーマータナカの今日のアルコール消毒。
個人的にはインフルエンザも花粉症も罹ったことが無いと記憶するが、実態は鈍感で自覚症状が無いだけという見解が多数派を占めている。
従ってマスクやアルコール消毒ともずっと無縁で過ごしてきたのだけれども、今回ばかりは自己防御というより世間様にご迷惑をかけないためにも検討しなければならない。
ところが市中に在庫は一切無い。
コロナウイルスに有効な消毒液は、手にはエタノール、物の表面には次亜塩素酸ナトリウム(0.1%)で、「ベンザルコニウム」や「クロルヘキシジングルコン酸」は効果が無かったり薄いとされている。
ここは、おバカな酒飲みならだれでも考える、酒で代用だろう。
消毒用エタノール(76.9~81.4vol%)は化学組成的にはお酒のアルコールと同類だ。
但し一般的酒類はアルコール度数が低いため、高めのものベスト5を紹介しておく。
ただスピリタスを始め店頭では、こちらも品切れ品薄状態となっている。
当然吾輩は数種の在庫を持っているが、本音のところは、スプレーする位なら死んだ方がましだ。
スピリタス(ポーランド・96°)
エバークリア(アメリカ・95°)
ゴッチェ インペリアル(イタリア・92°)
ポティーン (アイルランド・90°)
アブサン ハプスブルグ エクストラストロング(ブルガリア・89.9°)
他にも有名どころで、ロンリコ151(ラム・75.5°)ブラントン・ストレート・フロム・ザ・バレル(ウイスキー・65~69°)等もある。
※ただし(社)アルコール協会の見解は、一定の消毒効果は見込めるが推奨はできないとしている。
クラフトGIN
ファーマータナカの今日のクラフトGIN。
世界には6,000種のGINがある。
蒸留酒であるGINの2大特徴は、①熟成はしない②香りのする植物(ボタニカルという)を使用する。
その上、巷ではクラフトGINなるものが作られ、注目を集めている。
「Nordes Atlantic Galician Gin」は、スペイン最北西部のガリシア州で造られ、高級葡萄がベーススピリッツ、個性的な15種のボタニカルを使用の、甘く華やかな香りが特徴のクラフトGIN。
ジントニックで飲むなら、トニックウォーターにも拘りたい。
それにしても、こんなんたくさん作られたら、ラム酒のところでも書いたが、とても一生では飲み切れない。
まず、不老長寿の酒を探す旅に出るのが先決だ。
泥酔
ファーマータナカの本棚。
本音を言えば、酒量と失態と才能に於いて、彼等と同等、否、勝るとも劣らないとさえ思っている。
例えば無頼を気取る太宰治は、泥酔しても文豪だ。
中原中也、檀一雄、横溝正史、小林秀雄、平塚らいてう、大伴旅人、小島武夫(雀士)、梶原一騎(漫画原作家)等も泥酔組だった。
彼等は、浮気をしても悲恋だ。
夢や計画が頓挫しても非業の死だ。
約束を破っても、借金を踏み倒しても、暴力を振り翳しても、夜逃げをしても、何処で小便しても何処でゲロっても何処で眼を覚ましても…ああもう何でもアリだ。
片やブァーマータナカが泥酔すれば、現時点では、箸にも棒にもかからぬ単なる大酔っ払い(小トラ?)のひとりだと統計処理される。
そもそも生きてるだけではた迷惑だし、淡い純愛でさえ色狂いだし、死ねば当然無駄死にだ。
故に近々集大成として、「人生で大切なことは泥酔で無くした」を上梓するつもりだ。
だが泥酔のため、無くしたものを綺麗さっぱり健忘していて一行も書けないという、才能ある者だけが直面する深くて暗い矛盾の酒の河が、目の前には滔々と横たわっている。
その現実を打破するため、今日も又苦悩にまみれ、河を渡ろうとして(又泥酔して)いることなんぞ、凡人達には解るまい。
ついでに、下らん事だけは延々と書ける才能が、うとましい。
ミント
久留米の市街地の本通りは、ひとまずそれなりに整備されたと言っても良いだろう。
とある本通りの何筋か裏に、結構長めの石畳の散歩道があったりする。
ひっそりとしていて、散歩する人とすれ違う事も滅多にない。
そんな風だから、せっかくの両脇の花壇の手入れは、お世辞にも行き届いているとは言い難い。
それでも雑草も含めて、四季折々の風情なんぞを、こっそり感じる事が出来る。
今日は、珍しくミントの群生を見つけた。
てっぺんの一葉を摘んでみると、懐かしい香りがした。
昔のバーテンダーは、自宅のベランダなんかに、必ず植えていたものだ。
取り立ての新鮮な香りを供するのは、密かに自慢でもあったのだ。
ハーブの類いが発する強力だったり独特だったりするその香りは、元々は害虫から我が身を守ろうとする忌避効果を狙ってのものだ。
それを人間って奴が、ちゃっかり香草として利用してきたに過ぎない。
ハーブは総じて繁殖力旺盛で、素人でも容易に育てられるが、反面その香りをもってしても突然アブラムシなどの害虫の大量繁殖攻撃によって、お手上げになる事も多い。
行き着くところはワンパターン、バーボンで味わう芳香なミントジュレップ、ラムとの相性を楽しむモヒート、ここはどうしても遠き異国の地で喉を潤すことが必要だと思えてくる、いかん。