戯作文

戯作とは、通俗小説などの読み物の総称で、戯れに書かれたものをいい、戯作の著者を戯作者という。 そこかしこに書き散らかしたり、細やかにしたためた駄文の置き土産を、ここに印す。

ブリティッシュ・パブ

ファーマータナカの今日のパブ。

Guinness Stout、エール(上面発酵)ビール、Fish & Chips、cash on delivery、テラス、Darts、スポーツ観戦モニター…。

呑み助には、アメリカンもいいけど、ブリティッシュもそそられる。
先日S氏にインターナショナルないい雰囲気の店があると案内された英国風パブで、外国人客も多く、日本の都会や観光地や宿やお店は、まるで海外旅行をしているのではと錯覚するほど、急速に国際化しているのは間違いない。

後でチェックを入れてみたら、大名や中洲にもあり、Google Map の「行きたい店」にマッピングしていた。
(注:連日連夜飲み倒しているわけではありません)

 

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焦がした麦芽により色は黒く、味は濃厚で苦み酸味とも強く、神の泡と、全てが魅力的。

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エールビールを cash on delivery のパブで。

ディプロマティコ

ファーマータナカの今日のラム酒世界旅。

 (Diplomatico Reserva Exclusiva 12anos)は、外交官という意の、バニラやカラメル香味の心地良いミディアムボディのベネズエラ産ラム。

ラム分類の一つとして、製法によりスペイン系(Ron)・フランス系(Rhum)・イギリス系(Rum)というのがあり、これはスペイン系。

(※お断り-半世紀?に渡る彷徨で嗜んだものの1つで、のべつ飲み歩いているわけではありません)

 

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ジャック・ダニエルズ

ファーマータナカの迷酒珍酒カクテルストーリー。
(登場する人物物語等は妄想と願望の産物であり、実在の人物等とは一切関係ありません、たぶん)

アメリカが好きだった。
一面緑の庭、白い大きな家、アメリカン・ドリーム、そして何よりも自由。

はじめたバーは、アメリカン・ビールを沢山並べた。
バーボン・ウイスキーを沢山並べた。
連日、ビールをチェイサーに、ストレートやロックで、何十本あおったことだろう。

だが想い焦がれたアメリカは、結局手前勝手なご都合主義、幻想に過ぎないと気付いて、もう何年経ってしまっただろう。

でもこのウイスキーだけは、違う。
まず、水だ。
テネシーのリンチバークに湧き出るライムストーンウオーターという特別な水を使っている。
それに、蒸留したてのウイスキーを砂糖カエデという木で作った木炭の中を通し、さらに磨き上げるチャコール・メロウという製法なのだ。

伝統ある手作りによる磨きぬかれた味、絶妙な香り、このウイスキーがかろうじて、私の夢、私のアメリカなのだ。

🍸🍸🍸 ジャック・ダニエルズ(テネシーウイスキー)🍸🍸🍸

諦めた時夢は終わる、諦めなければ夢は叶う、としたり顔で人は云う。
男の子なら昔は野球選手、今はサッカー選手というところか。
そしてピケティではないが、遅かれ早かれ殆ど全ての人が、自分が1%でないことをいつしか受け入れていく。

もともとバーボンが主体で種類もそこそこ豊富なバーなのだが、バーテンダーの趣味と実益を兼ねて、いつも珍しい銘柄が何本か、さりげなく置いてある。
お客さんが気にいってくれればラッキー、早速御相伴に与れるという筋合いだ。
今日は偶々、銘柄だけでなく、サイズに面白みが感じられる1本も置いてある。

いつものように早目の時間帯、T氏は彼女とカウンターに留まる。
座りながら一回り大きいサイズのジャック・ダニエルズのボトルをチラ見したようだった。

好奇心旺盛な浮気性のお客の対極に、頑なに同じボトルを飲み続けるお客がいる。
このバーでジャック・ダニエルズといえば、彼の他には彫刻家のU氏、バーテンダーの古い友人で地上げ屋のM氏だ。
T氏は、同世代の仲間達がオチャラケて無節操にあれこれ飲んで騒ぐのに、開店以来ずっとジャック・ダニエルズ、しかも何故かストイックな雰囲気で飲んできた。
ファッションもいわゆるデザイナーズブランドだが厭味はない。
その上同伴の彼女がこれまた極上の美人ときていて、くっきりとした眉と目鼻立ち、なのにどこか日本的な奥ゆかしさも併せ持っていて、傍目にはベストカップルと映る。
仕事も当時はまだ珍しいコンピュータ関係というカッコいい職種。

どう見ても何の不満も不自由もなく見えるのだが、実はT氏プロゴルファーの夢を追い求め続けていた。
無論世の中が普通の人だらけなのはとうに解っている。
そしてそれぞれ普通の人がかって自分と同じように夢を追い、結局は殆どが白旗を揚げ続けてきたという人間の業も。
T氏は、ふとゴルフクラブをそろそろ脇に置かなければいけない頃合いが来たのかもしれないと思った。
普通の人がやるように、生活という荷に変えなければいけない時かと・・・。

きっとこのウィスキーも卒業すべき時期が来たのだろう。
未練だが、今日から普通の人になり、普通の人生を始めるのだ。

タイミングがいいのか悪いのか、ちょうどボトルが空っぽだ。
T氏は、フッと小さな溜息をついた。
口数の少ないT氏の口が開く。
「マスター、あのでかい1Lのジャック・ダニエルズもらってもいいですか?」
「勿論いいよ。」

ジャック・ダニエルズは彼の夢の証。
せめてサイズを変えることで一区切りつけることに、誰が文句を言えるだろうか。

バーテンダーはおもむろにそのボトルを手に取ると、キャップシールを無造作に切る。
アイスキューブの上を、琥珀色の夢が、トックトックトックと穏やかな音を立てて流れ、やがてゆっくりと融けてゆく。

人はそれぞれ心の中に、ひとりひとりのジャック・ダニエルズを持っている。
(2002/01/30記を加筆修正)

 

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Bar Time Kurume 2019考

Bar Time Kurume 2019考。

流行り廃り、浮き沈みというものがあるのが、世の常だ。

だけど、地道に研究開発に携わってきた国産の酒類メーカーや、頑なに腕を磨いてきたバーテンダーがいる。
貴方の膝元にある、そんなキラリと光る一杯に、そして何よりもそれを供する一軒の店と一人の人間に、是非貴方だけのスポットライトを当てて欲しい。

 

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Cafe&Casual Bar Farmer's Cabin 閉店

我楽多酒整理。


1984年創業、Cafe&Casual Bar Farmer's Cabin 閉店記念につき。


WILD TURKEY STAMPEDE '55 / Bourbon
1898 Ardmore Traditional Cask Peated Single Malt / Scotch, Highlands
百年の孤独 長期貯蔵麦 / Japan

 

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Good Night!

和暦にも、人生にも、もちろんお店にも、始めと終わりがある。

先日の FB 上で、老舗的店舗がどんどん姿を消していく現状を嘆いてみたが所詮他人事、ところがおっとどっこい、最も思い入れのある店が4月27日で閉店する。
ビルの取り壊し(建替え?)が理由らしいが、詳しくは知らない。
そういえば30数年前にこの物件を契約する時既に、このビルは若干傾いていたので、いよいよ寿命ということかもしれない。

当時池町川界隈は、川こそ整備されて綺麗になってはいたが、その閑散とした川沿いのビルのしかも2Fで飲食店なんぞ絶対潰れると、プロ連中から太鼓判を押されたものだ。
思いつきだけで始めたズブの素人は、その後紆余曲折を経て、当時すでにこの世界で輝いていた(と思う)何人かのプロと出会い、タッグを組むことになる。

その中の一人が O 氏だ。
7歳年下なのだが、その立ち振る舞い、無駄のない動き、軽妙な語り口は、プロそのものと言ってよいだろう。
そして特筆すべきは、何かきっと秘密があるのは間違いないと思うが、今も変わらない異常ともいえるその若さだろう。

バーテンダーとは、海馬を日々アルコール漬けにして、腎の臓と肝の臓を徹底的に痛めつけながら、カウンター越しの客のたった数分の孤独を埋めるために、来る日も来る日も、こちら側で途方もない時間と孤独を抱えて待ち続ける仕事だ。
そこに必要な要素とは、持続力と想像力、店を通してそして彼を通して、少しは学ばせてもらったと思う。

とっとと退散した私の荷物を背負い、又新たな荷物をも自ら背負って、ここまで本当にご苦労様でした。

4月24日水曜日に、ゆかりのお客様やスタッフで、長年の労をねぎらいたいと思う。
湿っぽい Good Bye より、Good な Night にしたい。
是非ご参集いただきたい。
(顔見せてくれる方は、コメント入れていただけるとなおありがたい)

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ギムレット

去年は、「ギムレット」が押し迫っての最後の一杯だった。

きっとあのスーパードライの登場が大きかった、何でもかんでも辛口が通のような風潮になり、ギムレットもジンと生ライムのみの辛口レシピがもてはやされている。

あの「サヴォイ・カクテルブック」も「テリー・レノックス(レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』)」も草葉の陰で泣いているだろう。

天邪鬼のファーマータナカは、当時日本では入手できないローズ社のコーディアル(加糖)ライムを海外に行った時探しまくった。
(実のところは海外のコンビニみたいなところに普通にあったし、今ではあのAmazonで手に入る?)

冷凍庫に冷やされたタンカレージン、今ではポピュラーになった生ライムに、プラス1tspのパウダーシュガーが見えて、バーテンダーの確かな知識とポリシーに安堵する。

一口すすりながら、年末年始のこの時期に、世間一般の皆様の休暇堪能中とは裏腹にがむしゃらに働いていた時、を想い出す。

医療介護の現場が正しくそうであるように、水商売農業と、人が休んでいても或いは人が休んでいるからこそ、働かざるをえない職種職場がある。

民族大移動の窮屈な里帰り、旧知の友との再会、待つ人がいない孤独な単身者、現実にはこの時こそ居場所を必要としている人がいる。

まだ、郊外の大型SCはなく、アーケード商店街がそれなりに賑わいを見せていた時代、当たり前のようにお正月休みで閉店していた商店主2世3世は、大晦日も元旦もなく営業する店子の我らを横目に見て、儲け主義の単なる掟破りと、陰口を叩いておられたとか。

今では、年中無休は当たり前を通り越し、労働者にもきちんと休暇を与えるべきだという流れにもある。

さてと、ギムレットは長い別れや遠き日を想うイメージ、果たして今年のおおつごもりは、どこでどんなカクテルを飲むことができるだろうか。

 

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