戯作文

戯作とは、通俗小説などの読み物の総称で、戯れに書かれたものをいい、戯作の著者を戯作者という。 そこかしこに書き散らかしたり、細やかにしたためた駄文の置き土産を、ここに印す。

Good Night!

和暦にも、人生にも、もちろんお店にも、始めと終わりがある。

先日の FB 上で、老舗的店舗がどんどん姿を消していく現状を嘆いてみたが所詮他人事、ところがおっとどっこい、最も思い入れのある店が4月27日で閉店する。
ビルの取り壊し(建替え?)が理由らしいが、詳しくは知らない。
そういえば30数年前にこの物件を契約する時既に、このビルは若干傾いていたので、いよいよ寿命ということかもしれない。

当時池町川界隈は、川こそ整備されて綺麗になってはいたが、その閑散とした川沿いのビルのしかも2Fで飲食店なんぞ絶対潰れると、プロ連中から太鼓判を押されたものだ。
思いつきだけで始めたズブの素人は、その後紆余曲折を経て、当時すでにこの世界で輝いていた(と思う)何人かのプロと出会い、タッグを組むことになる。

その中の一人が O 氏だ。
7歳年下なのだが、その立ち振る舞い、無駄のない動き、軽妙な語り口は、プロそのものと言ってよいだろう。
そして特筆すべきは、何かきっと秘密があるのは間違いないと思うが、今も変わらない異常ともいえるその若さだろう。

バーテンダーとは、海馬を日々アルコール漬けにして、腎の臓と肝の臓を徹底的に痛めつけながら、カウンター越しの客のたった数分の孤独を埋めるために、来る日も来る日も、こちら側で途方もない時間と孤独を抱えて待ち続ける仕事だ。
そこに必要な要素とは、持続力と想像力、店を通してそして彼を通して、少しは学ばせてもらったと思う。

とっとと退散した私の荷物を背負い、又新たな荷物をも自ら背負って、ここまで本当にご苦労様でした。

4月24日水曜日に、ゆかりのお客様やスタッフで、長年の労をねぎらいたいと思う。
湿っぽい Good Bye より、Good な Night にしたい。
是非ご参集いただきたい。
(顔見せてくれる方は、コメント入れていただけるとなおありがたい)

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ギムレット

去年は、「ギムレット」が押し迫っての最後の一杯だった。

きっとあのスーパードライの登場が大きかった、何でもかんでも辛口が通のような風潮になり、ギムレットもジンと生ライムのみの辛口レシピがもてはやされている。

あの「サヴォイ・カクテルブック」も「テリー・レノックス(レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』)」も草葉の陰で泣いているだろう。

天邪鬼のファーマータナカは、当時日本では入手できないローズ社のコーディアル(加糖)ライムを海外に行った時探しまくった。
(実のところは海外のコンビニみたいなところに普通にあったし、今ではあのAmazonで手に入る?)

冷凍庫に冷やされたタンカレージン、今ではポピュラーになった生ライムに、プラス1tspのパウダーシュガーが見えて、バーテンダーの確かな知識とポリシーに安堵する。

一口すすりながら、年末年始のこの時期に、世間一般の皆様の休暇堪能中とは裏腹にがむしゃらに働いていた時、を想い出す。

医療介護の現場が正しくそうであるように、水商売農業と、人が休んでいても或いは人が休んでいるからこそ、働かざるをえない職種職場がある。

民族大移動の窮屈な里帰り、旧知の友との再会、待つ人がいない孤独な単身者、現実にはこの時こそ居場所を必要としている人がいる。

まだ、郊外の大型SCはなく、アーケード商店街がそれなりに賑わいを見せていた時代、当たり前のようにお正月休みで閉店していた商店主2世3世は、大晦日も元旦もなく営業する店子の我らを横目に見て、儲け主義の単なる掟破りと、陰口を叩いておられたとか。

今では、年中無休は当たり前を通り越し、労働者にもきちんと休暇を与えるべきだという流れにもある。

さてと、ギムレットは長い別れや遠き日を想うイメージ、果たして今年のおおつごもりは、どこでどんなカクテルを飲むことができるだろうか。

 

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ソーテルヌ

ファーマータナカの迷酒珍酒カクテルストーリー兼新農業講座。

こんなところで又会うなんて、神様も悪戯好きだ。

ファーマータナカは酒に溺れていた(いる!?)。
情報収集と称してのべつ幕なし酒場や酒売場を徘徊していた。
貴女に初めて会ったのは、私にとっては似つかわしくない、とある福岡市内の高級ホテルでのワインの試飲会という、お洒落で運命的な出会いであった。

嗜好というものは段々としかも末期には、過激にエスカレートしていくものだ。
例えばペペロンチーノならニンニクと唐辛子の中にパスタが少量からまっていればいいという具合に、又例えば性愛なら鞭と縄と女王様という具合に(ちょっと違うか)。

お酒もまさしくその通りである。
ウオッカなら、96°か唐辛子入りに行き着き、ウィスキーならヨード香バリバリのアイラに行き着き、ブランデーなら荒削りのグラッパに行き着き、リキュールならスターアニス八角)入りのパスティス(アニス酒)に行き着く。

甘いだけのワインなんて、甘い恋と一緒で子供騙し、だから辛いか、えぐいタンニン臭が際立っていなければならないはずだと思っていた。
しかし、その会場に立つ貴女の、甘美だが上品なアロマ、気品を重ねたブーケ、高貴な白い肌のセクシーボディが、ファーマータナカをほんの一時だが、おどろおどろしい酒のタルタロスから引き戻してくれたのだった。

依存や刺激ではなく、忘れかけていた憧れやときめきを運んでくれた貴女。

 

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🍷🍷🍷 ソーテルヌ(白ワイン)🍷🍷🍷 

貴女の名前はソーテルヌ。

 

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たが所詮身分が違う。
下層階級のファーマータナカにとってのこの出会いは、偶然の成せる技であり、ましてや彼女を又舌でころがしたりはおろか、二度と貴女と会うことさえないと思っていた・・・。

それから随分と時は流れ、日々の忙しさにかまけていた。
いきあたりばったりで始めた百姓という仕事。
自給ではなく、人が農を業とした時から始まった様々な矛盾と徒労の山。

例えば、寒期の温度を獲るために、過湿というとんでもないお荷物をかかえてしまった。
密閉したハウスの中は、夜間湿度はほとんど100%になってしまうのだ。
カビの類には打って付けの環境となる。

「灰色カビ病」という病気がある。
ファーマータナカは、サラダ菜とトマトを作っていたのだが、そこに敢然と立ち塞がっていたのがこの病気の元凶、そう、「ボトリチス・シネレア」という菌だ。
この菌は枯死した有機物の上でも容易に繁殖できる。
日常生活の中でも台所に放置しておいた野菜や果物に生えてくるカビの多くもこの菌と言われる。
したがって、この菌にトマトの株元でも侵されるなら、自慢の1株から数千個を収獲するという高度な技術もあっという間に水泡に帰してしまう。
収獲間際のサラダ菜の同じく株元が侵されれば、ビタミンたっぷりの緑の葉も出荷不能で廃棄に涙する。

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18世紀のヨーロッパ貴族社会の頃から珍重されている「貴腐ワイン」という白ワインがある。
葡萄の開花期後に降ったり晴れたりの天気が適当な間隔で繰り返された年に、収獲期の葡萄に灰色のカビがたくさんつくことがある。
カビのついた葡萄は、表面のワックスが溶かされて水分の蒸散が盛んになるために、干し葡萄状態となり、果実内では酸が消費されて、糖度の高いいわゆる「貴腐葡萄」ができるのであった。
この一粒一粒を摘み取って作り出される「貴腐ワイン」がそう「ソーテルヌ」貴女だったのだ。

表と裏、善と悪、天使と悪魔、ジキルとハイド・・・。
ああ、ソーテルヌ!! ああ、ボトリチス・シネレア!!


あこがれの甘美なワインを作り出すその菌が、ファーマータナカの生業ひいては生存を脅かすその元凶だったとは、あまりにひどいめぐり合わせではないか。
(2004.05.16 記を一部加筆修正)

四方山煙草考

先日偶々煙草の話が出たので、四方山煙草考。

喫煙率低下、禁煙分煙、副流煙電子タバコと愛煙家を取り巻く環境は益々厳しさを増しているが、ファーマータナカも何を隠そう、かっては1日5箱(100本)のヘビースモーカーであった。
止めて35年になる(とは言え白状すれば禁煙後多分10本位は吸っている)が、散々世間に毒と迷惑を振り舞いてきたせいもあり、個人的には今傍で吸われてもに気にならないし、土台文句を垂れる筋合いも資格も無い。

気になったのでパチンコ屋の現状(こちらも数十年足を踏み入れていない)はどうなっているかとググってみたら、大きなところは分煙もあるし、何と健康増進法改正案が閣議決定され、2020年4月から全面禁煙となる方向だという。

当初は粋がって「ショートピース」(両切り T28mg N1.3mg)、その後「ロングピース」(T21mg N2.9mg)の時期を経て、「チェリー」(T15mg N1.1mg)という銘柄を長く愛煙した。
誰とは明らかにしないが、未だに頑なに「ガラム」(インドネシア産丁子風味で強烈に臭い T33mg N1.7mg)を吸って、本当に煙たがられている強者と言うか馬鹿者友人M氏もいる。

「チェリー」は意外にも日本で一番売れていた時期もあり、さくらんぼを思わせるような甘味も感じられたが、可愛らしい名前に似合わず振り返ってみると結構ヘヴィな煙草であった。
著名な愛飲者には、ドラえもんのび太のパパ、太陽にほえろのジーパン刑事(松田優作)、細野晴臣市川崑宮崎駿、森敦等がいる。

長年禁煙していてもおいそれと安心できない。
一説には真っ黒けの肺の浄化にかかる年月は「1日に吸っていた箱数×吸っていた年数×2」というから、ファーマータナカの場合は、5×15×2=150年となるので、浄化まであと110年余生きておかなければならない計算となり、少々しんどい現状がある。

はてさて、此のところ昔の事をグダグダ言っている事が多いようだが、ライブなイベントや話題が極端に少なくなった生い先短いオヤジの戯言と、ご容赦願いたい。

 

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ラム酒雑感

ファーマータナカの酒場放浪記(ラム酒雑感)。

馴染みの店のバーテンダーに常連客、そしてお気に入りの銘柄とくれば、その安心感の中で澱みがちな精神は、確かに解放されたかに見える。
しかし一方で、見知らぬバーの扉を開けたい衝動に駆られることがある。
今更恋でもないだろうに、初めてのドアに手をかける時、何かに出逢えそうな緊張感とときめきに、幾分背筋が伸びる(出る時は背筋がどうであるかも含めて、記憶がない場合がある)。
元来お酒なら何でも持って来いなのだが、その中でもラムは好んで嗜む。

今日の出逢いは、「サカパ23」(グアテマラ産)と「バルバンコート」( ハイチ産)のラム。

中米を旅行した時、グアテマラに地元の人が常飲するロン(ron)というスピリッツがあるというので、早速飲んでみたが、なるほど ron はスペイン語でラム(rum)の事、安いラム酒だったのだ。
グアテマラコーヒーと同じく、サカパは高級ラムで、多分地元の人の口には入らないという厳しい現実もあるが、それはさておき、ここでグアテマラに出逢えたのは喜ばしいではないか。
一方のハイチ(かってフランス領)のラムには rhum の表記、こちらはフランス語で同じくラムのことだ。

となれば、昔愛飲した「ロンリコ151」(プエルトリコ産、ロリコンではない、151とはUSプルーフでアルコール度数に換算するとジャスト50%の75.5°となる)は、ronrico のスペルだがら、「豊かで美味しい(rico)ラム」という意味だったのか。

ラムの原料は砂糖キビ(そのもの、あるいは搾りカスの廃糖蜜)だが、ラム発祥の地とされるカリブ海の島々にはサトウキビは自生していない。
持ち込んだはヨーロッパ人で、いわゆる三角貿易(砂糖・ラム酒・奴隷)とプランテーション農業で暴利を貪り、あらん限りの侵略と虐殺をもたらした。

旅行で足を延ばしたキューバでは「ハバナクラブ」と再会を果たしたし、「フロリディータ」でヘミングウェイの愛したフローズンダイキリ(砂糖抜きでグレープフルーツジュースが加わるという)が飲めたのも嬉しい。
そういえば昔飲んだ「クレマン」というラムは、同じくここカリブ海にあるフランス海外県マルティニク島からはるばる来ていたものだったのか。

砂糖キビさえあればどこでもラム酒は作れる、遠くアフリカ大陸の東側モーリシャス島もラムの一大産地、そこのラムを粋がって飲んでいたのも懐かしく想い出す。

さて、今回も色気無し味気無し、期待される艶話は披露できないが、日本の地方都市の小さなバーの片隅からでも、ほろ酔えば、世界を駆け巡ることができるのだ。

あとは飛び過ぎないこと肝心だ…。

 

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