戯作文

戯作とは、通俗小説などの読み物の総称で、戯れに書かれたものをいい、戯作の著者を戯作者という。 そこかしこに書き散らかしたり、細やかにしたためた駄文の置き土産を、ここに印す。

ソーテルヌ

ファーマータナカの迷酒珍酒カクテルストーリー兼新農業講座。

こんなところで又会うなんて、神様も悪戯好きだ。

ファーマータナカは酒に溺れていた(いる!?)。
情報収集と称してのべつ幕なし酒場や酒売場を徘徊していた。
貴女に初めて会ったのは、私にとっては似つかわしくない、とある福岡市内の高級ホテルでのワインの試飲会という、お洒落で運命的な出会いであった。

嗜好というものは段々としかも末期には、過激にエスカレートしていくものだ。
例えばペペロンチーノならニンニクと唐辛子の中にパスタが少量からまっていればいいという具合に、又例えば性愛なら鞭と縄と女王様という具合に(ちょっと違うか)。

お酒もまさしくその通りである。
ウオッカなら、96°か唐辛子入りに行き着き、ウィスキーならヨード香バリバリのアイラに行き着き、ブランデーなら荒削りのグラッパに行き着き、リキュールならスターアニス八角)入りのパスティス(アニス酒)に行き着く。

甘いだけのワインなんて、甘い恋と一緒で子供騙し、だから辛いか、えぐいタンニン臭が際立っていなければならないはずだと思っていた。
しかし、その会場に立つ貴女の、甘美だが上品なアロマ、気品を重ねたブーケ、高貴な白い肌のセクシーボディが、ファーマータナカをほんの一時だが、おどろおどろしい酒のタルタロスから引き戻してくれたのだった。

依存や刺激ではなく、忘れかけていた憧れやときめきを運んでくれた貴女。

 

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🍷🍷🍷 ソーテルヌ(白ワイン)🍷🍷🍷 

貴女の名前はソーテルヌ。

 

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たが所詮身分が違う。
下層階級のファーマータナカにとってのこの出会いは、偶然の成せる技であり、ましてや彼女を又舌でころがしたりはおろか、二度と貴女と会うことさえないと思っていた・・・。

それから随分と時は流れ、日々の忙しさにかまけていた。
いきあたりばったりで始めた百姓という仕事。
自給ではなく、人が農を業とした時から始まった様々な矛盾と徒労の山。

例えば、寒期の温度を獲るために、過湿というとんでもないお荷物をかかえてしまった。
密閉したハウスの中は、夜間湿度はほとんど100%になってしまうのだ。
カビの類には打って付けの環境となる。

「灰色カビ病」という病気がある。
ファーマータナカは、サラダ菜とトマトを作っていたのだが、そこに敢然と立ち塞がっていたのがこの病気の元凶、そう、「ボトリチス・シネレア」という菌だ。
この菌は枯死した有機物の上でも容易に繁殖できる。
日常生活の中でも台所に放置しておいた野菜や果物に生えてくるカビの多くもこの菌と言われる。
したがって、この菌にトマトの株元でも侵されるなら、自慢の1株から数千個を収獲するという高度な技術もあっという間に水泡に帰してしまう。
収獲間際のサラダ菜の同じく株元が侵されれば、ビタミンたっぷりの緑の葉も出荷不能で廃棄に涙する。

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18世紀のヨーロッパ貴族社会の頃から珍重されている「貴腐ワイン」という白ワインがある。
葡萄の開花期後に降ったり晴れたりの天気が適当な間隔で繰り返された年に、収獲期の葡萄に灰色のカビがたくさんつくことがある。
カビのついた葡萄は、表面のワックスが溶かされて水分の蒸散が盛んになるために、干し葡萄状態となり、果実内では酸が消費されて、糖度の高いいわゆる「貴腐葡萄」ができるのであった。
この一粒一粒を摘み取って作り出される「貴腐ワイン」がそう「ソーテルヌ」貴女だったのだ。

表と裏、善と悪、天使と悪魔、ジキルとハイド・・・。
ああ、ソーテルヌ!! ああ、ボトリチス・シネレア!!


あこがれの甘美なワインを作り出すその菌が、ファーマータナカの生業ひいては生存を脅かすその元凶だったとは、あまりにひどいめぐり合わせではないか。
(2004.05.16 記を一部加筆修正)

四方山煙草考

先日偶々煙草の話が出たので、四方山煙草考。

喫煙率低下、禁煙分煙、副流煙電子タバコと愛煙家を取り巻く環境は益々厳しさを増しているが、ファーマータナカも何を隠そう、かっては1日5箱(100本)のヘビースモーカーであった。
止めて35年になる(とは言え白状すれば禁煙後多分10本位は吸っている)が、散々世間に毒と迷惑を振り舞いてきたせいもあり、個人的には今傍で吸われてもに気にならないし、土台文句を垂れる筋合いも資格も無い。

気になったのでパチンコ屋の現状(こちらも数十年足を踏み入れていない)はどうなっているかとググってみたら、大きなところは分煙もあるし、何と健康増進法改正案が閣議決定され、2020年4月から全面禁煙となる方向だという。

当初は粋がって「ショートピース」(両切り T28mg N1.3mg)、その後「ロングピース」(T21mg N2.9mg)の時期を経て、「チェリー」(T15mg N1.1mg)という銘柄を長く愛煙した。
誰とは明らかにしないが、未だに頑なに「ガラム」(インドネシア産丁子風味で強烈に臭い T33mg N1.7mg)を吸って、本当に煙たがられている強者と言うか馬鹿者友人M氏もいる。

「チェリー」は意外にも日本で一番売れていた時期もあり、さくらんぼを思わせるような甘味も感じられたが、可愛らしい名前に似合わず振り返ってみると結構ヘヴィな煙草であった。
著名な愛飲者には、ドラえもんのび太のパパ、太陽にほえろのジーパン刑事(松田優作)、細野晴臣市川崑宮崎駿、森敦等がいる。

長年禁煙していてもおいそれと安心できない。
一説には真っ黒けの肺の浄化にかかる年月は「1日に吸っていた箱数×吸っていた年数×2」というから、ファーマータナカの場合は、5×15×2=150年となるので、浄化まであと110年余生きておかなければならない計算となり、少々しんどい現状がある。

はてさて、此のところ昔の事をグダグダ言っている事が多いようだが、ライブなイベントや話題が極端に少なくなった生い先短いオヤジの戯言と、ご容赦願いたい。

 

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ラム酒雑感

ファーマータナカの酒場放浪記(ラム酒雑感)。

馴染みの店のバーテンダーに常連客、そしてお気に入りの銘柄とくれば、その安心感の中で澱みがちな精神は、確かに解放されたかに見える。
しかし一方で、見知らぬバーの扉を開けたい衝動に駆られることがある。
今更恋でもないだろうに、初めてのドアに手をかける時、何かに出逢えそうな緊張感とときめきに、幾分背筋が伸びる(出る時は背筋がどうであるかも含めて、記憶がない場合がある)。
元来お酒なら何でも持って来いなのだが、その中でもラムは好んで嗜む。

今日の出逢いは、「サカパ23」(グアテマラ産)と「バルバンコート」( ハイチ産)のラム。

中米を旅行した時、グアテマラに地元の人が常飲するロン(ron)というスピリッツがあるというので、早速飲んでみたが、なるほど ron はスペイン語でラム(rum)の事、安いラム酒だったのだ。
グアテマラコーヒーと同じく、サカパは高級ラムで、多分地元の人の口には入らないという厳しい現実もあるが、それはさておき、ここでグアテマラに出逢えたのは喜ばしいではないか。
一方のハイチ(かってフランス領)のラムには rhum の表記、こちらはフランス語で同じくラムのことだ。

となれば、昔愛飲した「ロンリコ151」(プエルトリコ産、ロリコンではない、151とはUSプルーフでアルコール度数に換算するとジャスト50%の75.5°となる)は、ronrico のスペルだがら、「豊かで美味しい(rico)ラム」という意味だったのか。

ラムの原料は砂糖キビ(そのもの、あるいは搾りカスの廃糖蜜)だが、ラム発祥の地とされるカリブ海の島々にはサトウキビは自生していない。
持ち込んだはヨーロッパ人で、いわゆる三角貿易(砂糖・ラム酒・奴隷)とプランテーション農業で暴利を貪り、あらん限りの侵略と虐殺をもたらした。

旅行で足を延ばしたキューバでは「ハバナクラブ」と再会を果たしたし、「フロリディータ」でヘミングウェイの愛したフローズンダイキリ(砂糖抜きでグレープフルーツジュースが加わるという)が飲めたのも嬉しい。
そういえば昔飲んだ「クレマン」というラムは、同じくここカリブ海にあるフランス海外県マルティニク島からはるばる来ていたものだったのか。

砂糖キビさえあればどこでもラム酒は作れる、遠くアフリカ大陸の東側モーリシャス島もラムの一大産地、そこのラムを粋がって飲んでいたのも懐かしく想い出す。

さて、今回も色気無し味気無し、期待される艶話は披露できないが、日本の地方都市の小さなバーの片隅からでも、ほろ酔えば、世界を駆け巡ることができるのだ。

あとは飛び過ぎないこと肝心だ…。

 

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メーカーズ・マーク

我楽多酒整理番外編。(ファーマータナカの迷酒珍酒カクテルストーリー)

🍸🍸🍸 メーカーズ・マーク(バーボン・ウィスキー) 🍸🍸🍸


メーカーズ・マークのハイボールの記事でウィスキーのスペルの事を書いたら、ややこしい訳について若干1名から質問があったようななかったようなので追記する。

元々ウィスキーの起源を自認するアイルランド人が、アイリッシュを軽いスコッチブレンドと差別化するために余分な"e"を付け加えたとされる。

アメリカで Whiskey の綴りが使われているのは、ウイスキー蒸溜所の創設者にアイルランド系移民が多くいたことによるものだ。
従って現在では、スコットランド産のスコッチ・ウイスキー、カナダ(スコットランド移民が中心に製造)のカナディアン・ウィスキー、日本のウィスキーはスコッチ方式と呼ばれ e がない Whisky、アイルランド北部のアイリッシュ・ウィスキーとアメリカ産のアメリカン・ウィスキーはアイリッシュ方式と呼ばれて、e が入り Whiskey となっている。

ややこしいのはこれからで、メーカーズ・マークは創設者サミュエル家の先祖がスコットランド系移民であり、バーボン本来のライ麦主体のスパイシー&ビターではなく、小麦由来のスイート&スムーズと、封蝋でもわかる手造り感と家柄を信条としているので、e が抜けている。
オールド・フォレスターやオールド・ヒッコリーなども Whisky だ。

又、key が鍵を意味するところから、whiskey は鍵あり、Whisky は鍵なしと言われ、開拓時代のアメリカではウイスキーーがとても貴重で、必ず鍵つきで保管したとか、英国紳士は自制心が強いから鍵なんかなくても飲みすぎたりしないが、だらしのないアメリカ人には鍵が必要なのだといったエピソードもある。

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ファーマータナカに鍵が必要なのは言うまでもない。


チキンバス

中南米の旅行記などを見ると必ず「チキンバス」というものが出てくる。

中南米でなくても旅行をすれば、空港等のある場所からホテルや観光地へ移動する必要が生じるのは自然な成り行きだ。
移動手段は、タクシー、レンタカー、コレクティーボ(乗り合いタクシー)、旅行会社のシャトルバス、ツアーバス、ホテルの送迎バス、メトロ、そして「チキンバス」等といったところだろう。
もしあなたが、上品な方、或いはチキンな野郎なら、「チキンバス」に乗るのはご法度だ。
その余りの凄まじさに、こんなところには一瞬たりとも滞在できないと、すぐさま尻尾を巻いて国外退去するだろう。

何故「チキンバス」と呼ばれるか。
現地の人はスペイン語でカミオネタといい、庶民の大切な足として確固たる地位を確立している。
一説には、荷物棚の上に沢山の鶏を載せていたとも、乗客を限界までギュウギュウに鶏みたいに押し込んで走るためとも言われる。
アメリカのスクールバスの払い下げで、派手なペイント、恐ろしく燃費が悪そうな騒音と黒煙をまき散らしながら、カーブでもおそらく70km以上で突っ走る。
行く先の表示は一応あるが、「ガテ(グアテマラの事)」とか「ティグア(アンティグアの事)」とか大声でがなり立てられ、乗ろうにも思わず足が竦む。
どうも停留所はあってないようなものらしく、どこでも手を挙げて乗り込める。
始発の場合満杯になったら出発するので勿論時刻表はない。

一大決心をして乗り込むと、大音響の陳腐な音楽、不必要とも思えるクラクションの爆音連発が耳を劈き、一方通路は異常に狭く、その代わりシートは中途半端な2.3人掛け位の広さで、3人目は半ケツ状態で座る。
万一すし詰めでない場合、初心者はカーブではズッコケ堕ちる事必定だ。
屋根に乗せた大荷物の幾つかは、同じくカーブで落下しているだろう。

満杯で出発した筈なのに、何故かお構いなしに乗客を乗せていき、又いくらでも乗れてしまうのが流石「チキンバス」だ。 
それ故、若い女性やグラマーな女性の隣でもゴリゴリ座れる特典があるが、現実はおおむねお歳を召していたり、ムサ苦しいオヤジに当たる確率が高く、スリやバックを切られる窃盗に会う特典に差し替えられる場合が多い。

料金は安価だが初心者が解る術はなく、又支払は乗る時でも降りる時でもなく、途中で払う。
思いついたように車掌(と呼んでいいのか)役の兄ちゃんが、絶対無理と思える人の肉を無理くりかき分け進んで来て乗車賃を徴収する。
乗客も前から降りるのがが駄目なら、死んでも後ろから降りる。
又、溢れ返る乗客が何処から乗って来て幾らになるのかを把握している兄ちゃんは、プロの風上に置ける存在感だ。

途中山間部を通ったりするルートでは、強盗が乗り込んでくる事件も未だに散発しているといい、それでも毎日毎日これでもかこれでもかと、頻繁に騒音と公害を撒き散らかしている元気モンが、そう「チキンバス」なのだ。

乗ってみます?

 

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