戯作文

戯作とは、通俗小説などの読み物の総称で、戯れに書かれたものをいい、戯作の著者を戯作者という。 そこかしこに書き散らかしたり、細やかにしたためた駄文の置き土産を、ここに印す。

泥酔

ファーマータナカの本棚。

本音を言えば、酒量と失態と才能に於いて、彼等と同等、否、勝るとも劣らないとさえ思っている。

例えば無頼を気取る太宰治は、泥酔しても文豪だ。
中原中也檀一雄横溝正史小林秀雄平塚らいてう大伴旅人小島武夫(雀士)、梶原一騎(漫画原作家)等も泥酔組だった。

彼等は、浮気をしても悲恋だ。
夢や計画が頓挫しても非業の死だ。
約束を破っても、借金を踏み倒しても、暴力を振り翳しても、夜逃げをしても、何処で小便しても何処でゲロっても何処で眼を覚ましても…ああもう何でもアリだ。

片やブァーマータナカが泥酔すれば、現時点では、箸にも棒にもかからぬ単なる大酔っ払い(小トラ?)のひとりだと統計処理される。
そもそも生きてるだけではた迷惑だし、淡い純愛でさえ色狂いだし、死ねば当然無駄死にだ。

故に近々集大成として、「人生で大切なことは泥酔で無くした」を上梓するつもりだ。
だが泥酔のため、無くしたものを綺麗さっぱり健忘していて一行も書けないという、才能ある者だけが直面する深くて暗い矛盾の酒の河が、目の前には滔々と横たわっている。

その現実を打破するため、今日も又苦悩にまみれ、河を渡ろうとして(又泥酔して)いることなんぞ、凡人達には解るまい。

ついでに、下らん事だけは延々と書ける才能が、うとましい。

 

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ミント

久留米の市街地の本通りは、ひとまずそれなりに整備されたと言っても良いだろう。

とある本通りの何筋か裏に、結構長めの石畳の散歩道があったりする。
ひっそりとしていて、散歩する人とすれ違う事も滅多にない。
そんな風だから、せっかくの両脇の花壇の手入れは、お世辞にも行き届いているとは言い難い。
それでも雑草も含めて、四季折々の風情なんぞを、こっそり感じる事が出来る。

今日は、珍しくミントの群生を見つけた。
てっぺんの一葉を摘んでみると、懐かしい香りがした。

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昔のバーテンダーは、自宅のベランダなんかに、必ず植えていたものだ。
取り立ての新鮮な香りを供するのは、密かに自慢でもあったのだ。

ハーブの類いが発する強力だったり独特だったりするその香りは、元々は害虫から我が身を守ろうとする忌避効果を狙ってのものだ。
それを人間って奴が、ちゃっかり香草として利用してきたに過ぎない。
ハーブは総じて繁殖力旺盛で、素人でも容易に育てられるが、反面その香りをもってしても突然アブラムシなどの害虫の大量繁殖攻撃によって、お手上げになる事も多い。

行き着くところはワンパターン、バーボンで味わう芳香なミントジュレップ、ラムとの相性を楽しむモヒート、ここはどうしても遠き異国の地で喉を潤すことが必要だと思えてくる、いかん。

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ブリティッシュ・パブ

ファーマータナカの今日のパブ。

Guinness Stout、エール(上面発酵)ビール、Fish & Chips、cash on delivery、テラス、Darts、スポーツ観戦モニター…。

呑み助には、アメリカンもいいけど、ブリティッシュもそそられる。
先日S氏にインターナショナルないい雰囲気の店があると案内された英国風パブで、外国人客も多く、日本の都会や観光地や宿やお店は、まるで海外旅行をしているのではと錯覚するほど、急速に国際化しているのは間違いない。

後でチェックを入れてみたら、大名や中洲にもあり、Google Map の「行きたい店」にマッピングしていた。
(注:連日連夜飲み倒しているわけではありません)

 

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焦がした麦芽により色は黒く、味は濃厚で苦み酸味とも強く、神の泡と、全てが魅力的。

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エールビールを cash on delivery のパブで。

ディプロマティコ

ファーマータナカの今日のラム酒世界旅。

 (Diplomatico Reserva Exclusiva 12anos)は、外交官という意の、バニラやカラメル香味の心地良いミディアムボディのベネズエラ産ラム。

ラム分類の一つとして、製法によりスペイン系(Ron)・フランス系(Rhum)・イギリス系(Rum)というのがあり、これはスペイン系。

(※お断り-半世紀?に渡る彷徨で嗜んだものの1つで、のべつ飲み歩いているわけではありません)

 

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ジャック・ダニエルズ

ファーマータナカの迷酒珍酒カクテルストーリー。
(登場する人物物語等は妄想と願望の産物であり、実在の人物等とは一切関係ありません、たぶん)

アメリカが好きだった。
一面緑の庭、白い大きな家、アメリカン・ドリーム、そして何よりも自由。

はじめたバーは、アメリカン・ビールを沢山並べた。
バーボン・ウイスキーを沢山並べた。
連日、ビールをチェイサーに、ストレートやロックで、何十本あおったことだろう。

だが想い焦がれたアメリカは、結局手前勝手なご都合主義、幻想に過ぎないと気付いて、もう何年経ってしまっただろう。

でもこのウイスキーだけは、違う。
まず、水だ。
テネシーのリンチバークに湧き出るライムストーンウオーターという特別な水を使っている。
それに、蒸留したてのウイスキーを砂糖カエデという木で作った木炭の中を通し、さらに磨き上げるチャコール・メロウという製法なのだ。

伝統ある手作りによる磨きぬかれた味、絶妙な香り、このウイスキーがかろうじて、私の夢、私のアメリカなのだ。

🍸🍸🍸 ジャック・ダニエルズ(テネシーウイスキー)🍸🍸🍸

諦めた時夢は終わる、諦めなければ夢は叶う、としたり顔で人は云う。
男の子なら昔は野球選手、今はサッカー選手というところか。
そしてピケティではないが、遅かれ早かれ殆ど全ての人が、自分が1%でないことをいつしか受け入れていく。

もともとバーボンが主体で種類もそこそこ豊富なバーなのだが、バーテンダーの趣味と実益を兼ねて、いつも珍しい銘柄が何本か、さりげなく置いてある。
お客さんが気にいってくれればラッキー、早速御相伴に与れるという筋合いだ。
今日は偶々、銘柄だけでなく、サイズに面白みが感じられる1本も置いてある。

いつものように早目の時間帯、T氏は彼女とカウンターに留まる。
座りながら一回り大きいサイズのジャック・ダニエルズのボトルをチラ見したようだった。

好奇心旺盛な浮気性のお客の対極に、頑なに同じボトルを飲み続けるお客がいる。
このバーでジャック・ダニエルズといえば、彼の他には彫刻家のU氏、バーテンダーの古い友人で地上げ屋のM氏だ。
T氏は、同世代の仲間達がオチャラケて無節操にあれこれ飲んで騒ぐのに、開店以来ずっとジャック・ダニエルズ、しかも何故かストイックな雰囲気で飲んできた。
ファッションもいわゆるデザイナーズブランドだが厭味はない。
その上同伴の彼女がこれまた極上の美人ときていて、くっきりとした眉と目鼻立ち、なのにどこか日本的な奥ゆかしさも併せ持っていて、傍目にはベストカップルと映る。
仕事も当時はまだ珍しいコンピュータ関係というカッコいい職種。

どう見ても何の不満も不自由もなく見えるのだが、実はT氏プロゴルファーの夢を追い求め続けていた。
無論世の中が普通の人だらけなのはとうに解っている。
そしてそれぞれ普通の人がかって自分と同じように夢を追い、結局は殆どが白旗を揚げ続けてきたという人間の業も。
T氏は、ふとゴルフクラブをそろそろ脇に置かなければいけない頃合いが来たのかもしれないと思った。
普通の人がやるように、生活という荷に変えなければいけない時かと・・・。

きっとこのウィスキーも卒業すべき時期が来たのだろう。
未練だが、今日から普通の人になり、普通の人生を始めるのだ。

タイミングがいいのか悪いのか、ちょうどボトルが空っぽだ。
T氏は、フッと小さな溜息をついた。
口数の少ないT氏の口が開く。
「マスター、あのでかい1Lのジャック・ダニエルズもらってもいいですか?」
「勿論いいよ。」

ジャック・ダニエルズは彼の夢の証。
せめてサイズを変えることで一区切りつけることに、誰が文句を言えるだろうか。

バーテンダーはおもむろにそのボトルを手に取ると、キャップシールを無造作に切る。
アイスキューブの上を、琥珀色の夢が、トックトックトックと穏やかな音を立てて流れ、やがてゆっくりと融けてゆく。

人はそれぞれ心の中に、ひとりひとりのジャック・ダニエルズを持っている。
(2002/01/30記を加筆修正)

 

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Bar Time Kurume 2019考

Bar Time Kurume 2019考。

流行り廃り、浮き沈みというものがあるのが、世の常だ。

だけど、地道に研究開発に携わってきた国産の酒類メーカーや、頑なに腕を磨いてきたバーテンダーがいる。
貴方の膝元にある、そんなキラリと光る一杯に、そして何よりもそれを供する一軒の店と一人の人間に、是非貴方だけのスポットライトを当てて欲しい。

 

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